【検証 メタボリックシンドローム】 環境変化とメタボの確率
2008.08.06

 ■日系米人、メタボの割合 倍以上

 日本人がメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)になる確率は、現在の欧米化した栄養状態が続くとどのように変化していくのか。栄養摂取と病気の関係について、疫学の立場から多くの国際共同研究を手掛けている滋賀医科大学社会医学講座の上島弘嗣教授は、7月に大阪で開かれた「高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム第4回研究集会」で講演。日本人と、ハワイで生活している日系米人らを比べ、環境の違いによりメタボや動脈硬化など関連の病気の発症率がどのように異なっているか、日本人の生活習慣病の将来予測につながるデータを報告した。

 ■将来予測 日本も糖尿病高頻度に

 上島教授は、潜在性動脈硬化症の日米比較研究「ERA-JUMP」のデータに基づき講演した。この国際共同研究は、米国フィラデルフィアのピッツバーグ大学周辺の白人、ハワイ・ホノルルの日系米人、滋賀県の草津市在住の住民の3集団を対象に、それぞれ40歳代男性約300人について潜在性動脈硬化症、メタボなどがどのぐらいの割合で発症しているか、比較したもの。

 40歳代の男性については、動脈硬化の原因になる血液中のコレステロールの値は日米でほとんど変わらない。昭和40年代生まれの世代は食生活も欧米化し、脂肪が多い食事を取っているとみられることから、潜在性動脈硬化をチェックすることで、心筋梗塞(こうそく)による死亡が多い米国人の病態に日本人が近づく傾向があるかどうか、将来予測や予防につなげるのがねらい。

 超高速CT(コンピューター断層撮影装置)を使い、心臓の冠動脈に生じる動脈硬化(カルシウムの沈着による石灰化)を映し出すなど最新の機器による精密な調査。日米とも受診率は約50%だった。

 その結果、血圧については、日系米人が少し高めである以外は、大きな違いはなかった。動脈硬化のリスクになる悪玉(LDL)コレステロールについては、日本人と米国の白人とはほぼ同じだった。日系米人は低かったが、これはコレステロールを低下させる薬であるスタチンをすでに投与している症例が多かったことと関連していた。また、中性脂肪については、日系米人が最も高く、白人と日本人は同じ値だった。

 ところが、超高速CTなどで調べたところ、心臓の冠動脈の潜在性動脈硬化の陽性率は日系米人、白人の順で多く、日本人は低かった。頸動脈の内側を狭くするプラーク(隆起)の陽性率も日系米人、白人、日本人(ゼロ)の順に多く、日系米人の動脈硬化が進行していることがうかがえた。

 また、40歳代男性の糖尿病の頻度については、日系米人の糖尿病の頻度は13%を超える値で、日本人は5%以下、白人も約3%だった。上島教授は「1960年代からハワイの日系米人の糖尿病の頻度が高いとされていたが、それが現代の40歳代男性でも確認された。日本人が肥満になると日系米人のように糖尿病にかかる可能性は高いでしょう」と予測した。

 大きな違いが出たのはメタボだった。日系米人と日本人は身長の平均が約170センチとほとんど同一のため、日本の診断基準(男性の腹囲85センチ以上)で測定した。結果は、日本人が厚生労働省の国民栄養調査の約20%に近い値で、日系米人は、その倍以上もあった。

 上島教授は「日系米人は日本人より、平均身長がほぼ同じなのに、平均体重が10キロ以上も多い。このことからもこのような結果になるのでしょう。冠動脈硬化などの陽性率が高くなっているという状況があるので、日本人の遺伝子を持った人で環境が変わればメタボの頻度が高くなり、白人以上に動脈硬化になる可能性がある」と強調する。「現在、日本は先進国の中では心筋梗塞の死亡率が低い国の一つですが、その状態が本当に保てるように注意しないといけないことを示している」と断言した。

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 上島教授は栄養と血圧に関する国際共同研究「INTERMAP」(1996-99)の中の栄養調査のデータについても発表した。

 この調査は、日本人、日系米人、白人ら日米英中の4カ国の40-59歳の男女について調べている。

 その中で、全体のエネルギー摂取に対する飽和脂肪酸の摂取率は、英国や米国は10%以上で、日系米人、日本人の順に低くなっていった。ところが、動脈硬化などを防ぐ作用があるとされている多価不飽和脂肪酸については、日系米人や日本人はもっとも高かった。なかでも、魚の脂の主成分であるオメガ3系の不飽和脂肪酸が多く、エネルギー比率で1.3%を占めていた。日系米人は、日本人と同じように魚を多く食べる習慣が受け継がれているとみられ、長寿の高齢者が多いとされている。

 一方、肥満の原因となる砂糖類の摂取をグラムで換算して推計すると、米国の白人は1日当たり160グラムを超えている。日系米人は120グラムで、日本人は100グラム以下。活動量の指標として肥満度を示すBMI(体重割る身長の2乗)当たりのエネルギー摂取量を調べると、やせ形の日本人は多かったが、肥満型が増えている日系米人はもっとも少なく、あまり運動していないことが分かった。

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【プロフィル】上島弘嗣
 うえしま・ひろつぐ 金沢大学医学部卒。大阪大学医学部助手、国立循環器病センター集団検診部医長を経て平成元年から、滋賀医科大学教授。日本公衆衛生学会理事、日本循環器管理研究協議会理事長。専門は公衆衛生学、健康科学。

(2008/08/06)


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