【正論】メタボリックシンドローム特集
小児メタボの現状と対策を考える(2/3)
■腹囲80センチが基準
2008.12.25

---小児メタボの重要性は、どんなところにあるのでしょうか。
大関  診断基準に照らしてみると、大人ほど多くはありませんが、メタボリックシンドロームと考えられる病変が子供にも認められます。また、肥満の増加がメタボも増やしていくだろうと予測されます。小児期の肥満はかなりの部分が大人の肥満に移行していくことが知られており、特に男性はそうです。心筋梗塞や脳梗塞などは成人期に発症しますが、子供のころの太りすぎと相関していて、すでに血管の初期病変が確認されることが報告されています。

---そのまま大人のメタボにもつながっていくのですね。
大関  大人になってから太った人より、問題点が長く続いているということですから、それだけ早く発症するわけです。何より、生活習慣の基礎作りは小児期にスタートします。単に子供の時期をどう過ごすかという問題だけではなく、大人になって動脈硬化性疾患を発症するのを防ぐために、子供のメタボ対策は本質的な役割を果たすのです。

---何歳くらいから病変が見られるのですか。
大関  これは極端な例ですが、ドイツでは2歳の子供がメタボになって脳血管の異常を起こしてしまったという報告があります。小児メタボと動脈硬化の関連については、最近の米国の研究で、思春期(12〜19歳)の過体重が将来の冠動脈疾患の死亡率上昇とかかわっていることや、よりさかのぼった7〜13歳でBMI(肥満度)が高いと心血管病になるリスクが高いことも報告されています。

 日本の小児科でも超音波による血管の直接的な検査を始めており、症状が出るほど大きな変化ではなくても、血管壁の硬さに異常を確認したという報告が数年前から増えています。私たちの調査でも、腹囲と血圧には相関があり、血管の弾性とも相関するとの結果が得られました。

 こうした初期の変化は、放置してすぐ命に関わるというようなことはありませんが、そこが大人の動脈硬化のスタートラインであることは間違いありません。大人になって年齢とともに少しずつ進むのは仕方ないといえますが、子供の時期にスタートを切らないようにすることが大事です。

---診断基準(表)はどのように決めたのですか。
大関  腹囲を一番の基準にして、血清脂質と血糖値、血圧とで診断していこうという枠組みは、大人と同じです。腹囲については、標準的な人の分布を見て正常値を調べる方法と、どのくらいの腹囲で異常が出るかという異常値を解析する方法の2つがあると思います。

 100人中、小さい方から90番目以内の人の値、すなわち90パーセンタイル値を標準体重とすると、中学生では男80センチ、女79センチと、ほぼ80センチが基準値になります。一方、糖の異常などが出現するのは内臓脂肪面積60平方センチメートルで、それは男女ともに腹囲82センチに相当します。そして、11歳以降で異常の増加が顕著でした。

 82センチ以上は要注意で、80〜82センチはその前段階。80センチで区切ると分かりやすく、基準として使いやすい。中学生で80センチを超えると異常が出ると考えられます。小学生は80センチにならなくても異常値が出る可能性があるので、腹囲÷身長が0.5以上という値を示しました。たとえば身長140センチならば、腹囲が身長の半分の70センチを超えると要注意です。身長とともに変動していく基準としては目安になるでしょう。

 このほか、血清脂質、血圧についても日本人の健診データをもとに基準値を定めています。血糖値は世界的に100と110ミリグラムの2つの数値が採用されていますが、110ですと相当進行していますから、小児科としては100が望ましいと考えました。2項目以上が見られるとメタボリックシンドロームと診断します。この診断基準によると、0.5〜2.5%の子供がメタボリックシンドロームだと推定されます。

---診断基準は学校の身体測定の場などで活用していくのですか。
大関  将来的にはそうなればいいと思いますが、学校の健診は法律で定められた厳密なものですから、まだ全国的に実施するところまで至っていません。希望者に対する生活習慣病健診という形で導入しているところはあります。当面、子供のメタボに気付くのは校医さんや養護教諭でしょう。メタボの問題をやり始めた当初は、医療関係者からの問い合わせや講演依頼が多かったのですが、最近は学校医や栄養士の方など現場の人たちへと関心が広がっているのを感じます。

日本人小児のメタボリックシンドローム診断基準(6〜15歳)
(1)があり、(2)〜(4)のうち2項目を有する場合にメタボリック症候群と診断する。
(1) 腹囲           80cm以上 (注)
(2) 血清脂質
    中性脂肪       12mg/dLl以上
      かつ/または
    HDLコレステロール  40mg/dL未満
(3) 血圧
    収縮期血圧      125mmHg以上
      かつ/または
    拡張期血圧      70mmHg以上
(4) 空腹時血糖      100mg/dL以上

(注) 腹囲/身長が0.5以上であれば項目(1)に該当するとする。
    小学生では腹囲75cm以上で項目(1)に該当するとする。
(厚生労働省研究班)



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