【検証 メタボリックシンドローム】「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」(1/2)
最大の要因肥満 突然死通常の2倍
2008.12.03

睡眠時無呼吸症候群ネットワークがシンポジウム

 患者数300万人ともいわれる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」。眠っている間に、いびきをかいて無呼吸に陥る結果、高血圧や糖尿病、さらに心筋梗塞(こうそく)・脳卒中を引き起こし突然死に至るケースもあるという。その最大の要因は「肥満」で、のどの奥の気道部分に脂肪が沈着するなどして息を止めてしまうらしい。寝不足による居眠りで大きな事故の原因となり、社会的な問題になった。このような状況を防ごうと、先月には、NPO法人の睡眠時無呼吸症候群ネットワークが立ち上がり、東京でシンポジウムが行われた。

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 ■日常生活の「質」低下 脳梗塞の危険も

 日赤医療センター・脳神経外科部長の鈴木一郎氏は、脳血管障害の予防的見地から「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の現状と治療について」講演した。無呼吸状態がさまざまな病態を引き起こし、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とも密接に関連する。重症になると、夜間の突然死が普通の人の2倍以上になることを明らかにした。

 現在、日本人の平日の平均睡眠時間は、7.22時間だが、1970年代の平均8時間から、徐々に短縮してきている。どの年代を取っても、7〜8時間寝るのが一番長生きでき、それ以上短くても長くても死亡率が増える。ちなみに日・米・中の高校生の就寝時刻を比較すると、日本は、就寝時刻が午前0時を越える深夜型が多く、午後10時過ぎに就寝する高校生の多い米国や中国に比べ飛びぬけて遅く、将来への悪影響が心配される。睡眠時間の短縮に加え、最近はさまざまな睡眠障害が問題になってきている。

 睡眠障害の中でもSAS患者は多い。SASを扱うのは、主に呼吸器内科医だが、脳を脅かす危険因子としても重大で、放置すると、心筋梗塞や脳梗塞などが待ち受けている

 SASの治療器である呼吸補助マスクのCPAP(持続陽圧呼吸療法)の導入が2003年に急激に増えたことがある。この年、山陽新幹線で運転士の居眠りにより新幹線が緊急停止する事故があり、その後の調査でこの運転士がSASとわかったのがきっかけだった。

 SASには、睡眠中にのどの奥の部分が閉塞して無呼吸になる「閉塞型」と、呼吸中枢が障害される「中枢型」とがあるが、大半は閉塞型だ。あおむけになると、舌根部が重力のため沈下して上気道が狭くなる。眠りが深くなると、さらに舌根部などの筋肉が弛緩して舌が落ちてきて上気道をふさぎ無呼吸状態となる。

 太っている人は、あごやのどにも余分な脂肪がついているので、普段から上気道が狭い。また、生まれつきあごからのどにかけての骨格の形態も関係することがある。もともといびきは、狭くなった上気道を空気が通過する際、発する音なのだ。

 SASでは、無呼吸により苦しくなる結果目覚めを繰り返し、熟睡がままならなくなる。重症患者では目覚める回数が1時間当たり30回以上になる。睡眠パターンには、脳波からみると、熟睡状態の「ノンレム睡眠」、目がキョロキョロ動いて夢見る状態の「レム睡眠」とがあるが、この場合、レム睡眠もほとんど出てこない。診断の際、PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査を行うが、無呼吸状態でも胸と腹は懸命に呼吸しようとする深刻な状態が記録される。

 成人の閉塞型SASの診断基準は、日中の眠気、熟眠感の欠如、窒息感による覚醒(かくせい)、大きないびきなどのうち少なくとも1項目を満たすこと。PSG検査で、1時間当たり5回以上の無呼吸が確認されたら、SASとされる。いびきをかくのが必須項目であり、「夜間頻回にトイレに行く」「朝目覚めたときに、頭が痛い」「運転中、眠気を我慢できない」「最近、体重が増えた」なども重要な特徴だ。

 SASには、大きく分けて2つの問題がある。ひとつは、眠れないために脳の機能が落ちてしまい、日々の「生活の質」を落とすこと。深い睡眠が抑制されることで起きる昼間の眠気、記銘力低下、交通事故、性格の変化、鬱(うつ)状態などがあるが、昼間でも所かまわず眠ってしまうなどの兆候があれば、医療機関で「眠気チェック」診断を受ける必要もある。

 370万人を対象とした米国の交通事故調査では、健常者については、5年間で1人のドライバーが平均0.06回の事故を起こしているが、SASの人は、1人当たり0.41回となり、格段に多い。

 もうひとつ、起床時の頭痛も見逃せない。SASで起きがけに頭が痛いのは、無呼吸で夜中に酸素の吸入が足りないからだが、この症状は意外と放置されがち。一般の頭痛外来では、「SASまで考慮される状況にない」(鈴木氏)からだ。

 脳内の記憶をつかさどる「海馬(かいば)」領域は、虚血や酸素不足に最も弱いところだが、鈴木氏は、「SASが高齢者の記憶障害、認知症の原因になるのではないか」とも指摘する。ネズミの迷路の実験で、睡眠障害に陥ったネズミは、学習を積んでも、エサにうまくたどり着けない結果が報告されている。記憶にも、よい睡眠が欠かせないといえる。




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