鼎談「特定健診・保健指導元年を振り返って」(2/2)
2009.03.13

正しい情報提供をし続け、さらに認知度向上を

---今後の予防のあり方として

 古井氏 ドイツでは、2003年から生活習慣病の重症化防止のために、日本の特定健診制度と似た仕組みを取り入れました。5年目を迎え糖尿病による失明、下肢の切断の減少といった効果が見えてきたそうです。ただ、すでに病気の人だけが対象であり、国民全体に健診・保健指導をやる日本の制度はすごいと、感心していました。今後は、ドイツのようにすでに糖尿病だが、それ以上重くしないための予防や、肥満ではないが血圧は高いといった方への予防に取り組むことも重要でしょう。

 倉中氏 今回の制度では、疾病予防の成果が出れば将来、負担金の軽減措置があるというインセンティブがあります。しかし成果が出るまで相当なタイムラグがあるので、健保財政という面から見ると、なかなか動機付けにはなりにくいという弱点があります。しかし今や企業側が健保とともに従業員らの疾病予防に真剣に取り組むことは、将来、企業にとっても大きなメリットがあるという認識を持つ必要がある時代だと思います。

---それぞれの立場から期待するものとして

 古井氏 この制度が普及すれば中長期には、病気の重症化が減り、心筋梗塞や人工透析などにかかる医療費は結果的に減らせると思います。ドイツの例でも、患者さんの健康意識が高まることで治療の中断が減ったり、保健指導に積極的に参加するようになり、医師・患者・保険者それぞれメリットが付いて、どんどんドライブがかかっている状況だそうです。保健指導で健康体を取り戻し、企業は生産性が上がり家族は要介護も減って、社会全体が元気になるとよいですね。

 倉中氏 確かに健診までは行く人も多いが、保健指導までちゃんと受けてもらえるかどうか心配な点はあります。事実、社員の家族や国保の対象者にはまだ十分に認知されていません。まずは国や企業が、特定健診・保健指導についての正しい情報提供や成果を地道に提供し続けることで認知度を向上させていく努力が必要なのではないでしょうか。

 関 氏 健診を受けっ放しにせず、その結果を一人ひとりに保健指導できちんと返していき、そのデータを同じフォーマットで蓄積することの意義は絶大です。第一に国民には、これは自分にとってどんどん活用すべきサービスなのだと認識してもらう。第二にサービスを提供する側もデータを踏まえ対象者をその気にさせていくスキルや説得力をアップさせていってほしい。国としてもこれから得られるであろう貴重なデータを分析して地域や健保に活用法を伝えていくとともに、この予防事業そのものが皆のものであり、国民の一人ひとりが当事者として存分に活用できるよう努力を続けていかなければならないと思っています。

(産経新聞 2009/03/13)


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