生活習慣病を防ぐために全国規模で行われている特定健診・保健指導が2年目に入り、保健師らの間でこんな申し合わせが広がっている。
「『ましょう』の保健指導は避けるようにしたい」
つまり、健診を受けてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予備群に判定された人に「動機づけ支援」など生活改善の指導をするさいに「毎日の食事を〇〇カロリー減らしましょう」とていねいながらも押しつけに聞こえる語尾を使っては抵抗感がある。
未病の人に生活改善してもらうのだから、検査データを示して本人に説明したうえで自発的に「摂取カロリーを減らしたい」と心底から納得して「行動変容」してもらわないと長続きしないというのだ。
世界でも例がない予防医学の試みで、保健指導は保健師らが中心になって取り組む。それだけに、細部の言い回しに至るまでノウハウを共有して成功させるという意気込みの表れでもある。なにしろ「行動変容」は最大の関門である。
先月下旬に東京と大阪で初めて開かれた日本肥満学会主催の講習会でも、保健指導の実例をもとに役割分担した劇を演じたり、実例集を教材にベテランの保健師らが指導したり、経験を生かしたマニュアルの普及に努めた。両会場の参加者は計600人に上り、8時間にわたる講義終了まで満杯状態が続いた。
特定健診・保健指導は昨年4月にはじまり、初年度は制度の周知徹底が十分に果たせず、受診券の配布が遅れるなど実施上の問題点が浮上した。
このため、20年度分の受診率などの集計は11月まで延期されている。政府などの推計では市町村が医療保険者になる国民健康保険加入者の健診の受診率については、全国平均で20%台後半になる見込み、という。
25年に達成する目標65%には開きがあるものの、仙台市(49%)のような高率の例があり、地域によっては実現できる段階にある。この格差をなくし全体を底上げするために、成功している自治体の方法を取り入れるなど努力は欠かせない。
また、今回の健診は、病気の予備群を掘り起こし、保健指導により投薬治療なしで改善し医療費を削減することが主な目的で、それに付随した成果も出てきた。
たとえば、尼崎市では、これまで受診していなかった人の中から重症の高血圧者を見つけ、指導、治療により1年間で大半が改善した。放置すれば高額な腎臓の人工透析を必要とする症状に陥った可能性があり、受診率の向上が患者の健康を取り戻すとともに、医療費削減に貢献したことになる。
特定健診・保健指導は、医師や、保健師、看護師、管理栄養士らと国民の積極的な協力なくしてはスムーズに軌道に乗らない壮大な試みである。いまは成果が見え始めた段階で、この実績を重ねて国民の十分な理解を得るとともに、まず受診率の向上を重視してほしい。
今後、医学の進歩に伴い検査項目が追加され、成人のメタボとの関連が強く指摘されている小児を含む若年層にも対象が広がることが予想される。そのとき柔軟に対応できる体制づくりも健康日本の実現に役立つだろう。


























委員長









