「心臓病を防ぐために」札幌で市民講座(1/2)
2009.10.07

 心筋梗塞など心臓病の原因になるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防について最新の知識を披露する第57回心臓病学会学術集会市民公開講座「ストップ・ザ・メタボ?心臓病を防ぐために?」が9月20日、札幌市のホテルで開かれた。厚生労働省生活習慣病対策室の木村博承室長、札幌医科大学第二内科の斎藤重幸講師、天使大学大学院の伊藤和枝教授、兵庫県尼崎市市民サービス室の野口緑課長、国立健康・栄養研究所の宮地元彦・プロジェクトリーダーが講演。心臓病を予防するための食事、運動療法の成果や特定健診・保健指導などについて報告した。


■野菜料理と米飯…中性脂肪を軽減
ー天使大学大学院看護栄養学研究科教授・伊藤和枝氏

 伊藤和枝教授は、メタボ予防は、食事と運動による生活改善が第一で、目標はさまざまな生活習慣病の根源で命にかかわる病気の原因である内臓脂肪を減らすこととした。「内臓脂肪は臓器の周りにくっついているので代謝が盛ん。少し体重を減らすだけで、減少します。これまでのように標準体重まで持っていく大きな体重減少は必要ではなく、まず体重の5%に相当する約3キロを目標に1カ月当たり1キロ落とす程度でいいのです」と説明する。

 その方法は、食事で取るエネルギーを消費するエネルギーより少なくすることだが、体脂肪を燃やすつもりで食事を制限しても、食べ方を間違えれば自分の筋肉(タンパク質)を燃やしてエネルギーを出している場合がある。その場合、筋肉が減るので、消費エネルギーが増えず、いくら食事を少なくしても減量に結びつかない。

 伊藤教授によると、食事で取る栄養素の中でエネルギー源になるのは、糖質、脂質とタンパク質。糖質と脂質は、余ったエネルギーを中性脂肪に変え、体脂肪を増やす。一方、魚や豆腐などに含まれるタンパク質は、筋肉や血液など身体の組成にもなるが、取り過ぎると、尿の中に排泄される。

 体脂肪を減らすために気をつけるべき食品は、まず血糖を上げやすい砂糖、菓子、果物など糖質と、それに近いアルコール。とり過ぎると肝臓で中性脂肪(体脂肪)に変わるためだ。脂質も、マヨネーズ、バター、サラダ油だけでなく獣鳥肉に含まれ、アイスクリームなど乳製品にも多い。

 また、大事なことはやせるために米飯をやめてはいけない。1日に必要なタンパク質の3分の1は米飯から取っているからだ。さらに、炭水化物がないと体脂肪は燃えない。そのためには、1日に炭水化物100gは必要で、やせたいときにも、1食にご飯軽く茶碗に一杯は必要、という。

 こうした食事療法の中で、伊藤教授はカリウムやマグネシウムを多く含む野菜料理がメタボ予防に効果があることを明らかにした。

 野菜には、血糖や中性脂肪、血圧さらに動脈硬化を改善する食物繊維や、カリウム、マグネシウム、抗酸化ビタミンが含まれている。なかでも、カリウムは食塩を尿の中に排泄したり、カリクレインというタンパク質分解酵素を増やしたりして血圧を下げる物質として知られている。

 伊藤教授らは、まず10人に10日間にわたり、カリウムの多い食事をとってもらい、血液中のメタボのリスク要因の変化を調べた。その結果、血圧だけでなく動脈硬化に関係する総コレステロールが平均で188mg/dLあったのが、20mg/dL減少したほか、中性脂肪も同程度減った。一方で、善玉コレステロール(HDL)がやや増え、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌量がぐんと増え、糖尿病を改善するだけでなく、中性脂肪を減らす効果があることがわかった。

 また、マグネシウムについては、23人にマグネシウムを4週間多く取ってもらった結果、対照群(10人)に比べ悪玉コレステロール(LDL)は減少。逆に、善玉コレステロールについては、この生成に関係するLCATという酵素が増えた結果、核になるタンパク質(アポAI)が増え、善玉の増加につながった。

 「マグネシウムが欠乏すると突然死が起こることも知られている。マグネシウム、カリウムはいずれも緑色野菜などに多く含まれており、血管の病気に有効な栄養素であるといえます。また、メタボの予防をいい方向に手助けしており、心筋梗塞・脳卒中の予防には1食に1、2皿の野菜料理が大切」と話す。ただ腎臓の悪い人はカリウムの取り過ぎに注意。

 伊藤教授は「薬を投与するわけでなく、食事を変えるだけでメタボが改善されます。まさに『食は医なり』で、成功するには、心筋梗塞、脳卒中など大きなイベントを起こさないために、自分にできる計画を自分で決め、その日から一歩ふみ出して実行することです」と断言した。

 
■深刻な歩数減少 目標は「1日1万歩」
ー国立健康・栄養研究所プロジェクトリーダー・宮地元彦氏

 厚生労働省の国民健康栄養調査では、日本人の1日当たりの歩数は、10年前が男性約8000歩、女性約7000歩だったが、いまは男女とも1000歩程度と10%も減っている。宮地元彦氏は「メタボや生活習慣病予備群の増加の原因として、歩数の減少が大きくかかわっています」という。歩数は、「身体活動」の指標で、宮地氏は「日本人はこの10年間で、10%も体を動かすこと全体を減らしてしまったと考えて間違いがない」と推測する。

 この「身体活動」の強度を示す「メッツ」という指標が広まっている。じっと座っているときのエネルギー消費量を1とし、その何倍のエネルギーを使っているかということを表す、活動の強さの単位だ。例えば3メッツは、その3倍のエネルギーを使っているという意味で、軽い筋力トレーニングの運動量に相当する。生活活動にあてはめれば、「自転車で平地を走ったり、子供と外でブランコをしたり、お風呂を洗ったり」は4メッツ、階段の昇降は6メッツだ。

 日本人が生活習慣病予防をするための一つの大きな目標は「健康な人は1日1万歩を目標に歩こう」というもの。おおむね1日1時間ぐらい、歩行を伴うような活動が目安だと言う。また、スポーツやジムでの運動なら、1週間にたった1時間だ。

 すでにメタボになっている人は、今の生活にさらに3000歩、30分ぐらい歩く時間を増やす必要があるが、3メッツを4メッツに変えるだけでも、25%エネルギー消費量が増える。

 歩数計を携帯するのもいい。「1万歩歩こう」という具体的な目標を示されると、毎日歩数計の結果が気になる。そのような状態では、おおむね1日当たり2500歩、歩数を増やすことができるという研究成果がある、という。宮地氏らは、長野県佐久市で、240人を対象に肥満改善プログラムを行った。歩数計などを持ってもらい、3カ月に1度だけ食事や運動の指導をした。毎日、歩数計の記録もつけてもらった。その結果、1年目に運動指導をしたグループは約1600歩、歩数が増え、平均体重が5キロ減少したのに対し、2年目に運動指導をしたグループでは、1年目に歩数計による介入を受けていないため、歩数は増えなかったが、2年目には1800歩の増加、体重減6キロとなった。

 宮地氏は「ストレッチングやヨガのほか、テレビゲームのような効果がはっきりしなかったものに対しても科学的証拠がだいぶ増えてきました。身近な道具を使って、身体活動を増やしていっていただければと思います」と話している。




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