ストップ・ザ・こどものメタボ(1/2)
2009.11.04

 子供たちの肥満・メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を防ぐために、第30回日本肥満学会市民公開講座「ストップ・ザ・こどものメタボ」(共催・メタボリックシンドローム撲滅委員会、小児肥満対策推進委員会)が10月10日、浜松で開かれた。浜松医科大学小児科の大関武彦教授、国立成育医療センター第一専門診療部内分泌代謝科の堀川玲子医長、浜松市立砂丘小学校の大石隆示校長、浜松医科大学付属病院栄養部栄養管理部門の仲山順子部門長、三重大学教育学部保健体育講座の冨樫健二教授が講演、小児肥満と食習慣・生活習慣病とのかかわり、予防対策などについて報告した。

■腹囲80センチ超なら早期診療を
ー浜松医科大学小児科教授・大関武彦氏

 浜松医科大学小児科の大関武彦教授は「こどもの肥満?何が問題か、どうすればよいのか」と題して講演した。

 1800年代、すでに英国の作家、チャールズ・ディケンズは小説の中に、いつも居眠りしがちな「ピックウイック症候群」の肥満の少年を登場させている。肥満児の病状は早くから知られていたが、こうした子供たちは、肥満によって肺換気障害などになり心臓に負担がかかって心不全などで早死にすることもあった。ところが近年は小児期の肥満で、いわゆるメタボで徐々に慢性的な血圧や血糖異常を起こして、大人と同様、生活習慣病になる子供たちが幅広く増えていることを警告、対策の重要性を訴えた。

 肥満によって肝機能や高インスリン血症、高コレステロールなど代謝異常がひどくなれば、「小児肥満症」と診断され、速やかな治療が必要となる。子供たちの肥満は、昭和60年代2〜3%(男子)だったのが、今では全児童の8〜10%の割合になり、3倍以上増えた。

 日本人の子供だけでなく、世界的にも高率に増加しており、大関教授は「われわれが暮らしている現代社会の一般的な生活様式が肥満を引き起こすもとになっている。子供に一番しわ寄せが起きやすく、影響が強く出てきているのではないか。われわれ全体の未来にかかわる問題」と指摘する。

 近年、食べる量や脂肪分の多い食事が多くなり、ここ数年の統計でもわが国の脂肪摂取量は増加している。夜間でも手軽にコンビニで夜食が購入できるし、子供たちのテレビの視聴時間が長くなればなるほど、過体重になることも明らかだ。生活習慣が重なりメタボリックシンドロームのリスクが高くなった子供たちは、動脈硬化から生活習慣病への進展が早いことも分かりつつある。

 どう予防するか。まずは適切な食事と、しっかり運動する習慣を身に付けること。「食事はバランスの取れた、偏食のない食事の取り方。いわゆる『食育』というものを家庭や学校で心がけたい。運動、スポーツは楽しくできる力を身につけ習慣化できれば将来、大変役に立つだろう」。そして、子供のメタボを家庭で測る目安として、子供の腹囲が80センチを超えたら赤信号、この太さはどの年齢でも多過ぎるので、早期に病院での診療を勧めている。

■胎児期からの環境整備大切
ー国立成育医療センター内分泌代謝科医長・堀川玲子氏

 国立成育医療センター内分泌代謝科の堀川玲子医長は「胎児期に芽生える小児メタボ」と題して、「小児の肥満・生活習慣病は、乳幼児期から始まるが、さらにその前の胎児期からの環境も大事」と強調した。

 まず、子供のメタボは「成人のひな型」とし、臨床経験から、肥満の子供たちにも脂肪肝や肝機能障害、さらに高血圧、糖尿病など大人と同じ生活習慣病が起きていると指摘した。現在の小児肥満の出現率は特に男子に多いが、思春期には男女とも増加。堀川医長は「太っているだけでなく動脈硬化は小児期から始まっており、成人の生活習慣病にそのまま移行していく。運動能力の低下や自分に対する評価が低かったりするなど、それ自体がすでに疾患であると考えていいのでは」。

 最近のデータで肥満小児が肥満の大人になるリスクは、非肥満の子供の2倍。肥満の成人女性の30%は思春期から肥満。4歳、あるいは14歳の肥満がもっとも成人肥満と関係する?などと報告した。CT(コンピューター断層撮影)スキャンで内臓脂肪面積を測ると、140センチという子供も見られ、肥満で首や脇の下に黒い色素が沈着する「黒色表皮症」が現れる子は、糖尿病の予備群、メタボの始まりを示している。

 小児肥満は、なぜ起こるのか。かなり早い時期の肥満は遺伝的要因が考えられるが、それ以外は主に過食・高脂肪食・運動不足などの生活習慣、そして車社会などの環境要因が挙げられる。3歳半ぐらいの早い時期から肥満度が増してくる子供は、思春期になっても肥満度や内臓脂肪の量が多いことが確認されている。


 さらに短時間睡眠が肥満傾向を助長することも分かってきた。また、現代社会では、摂食異常としての肥満もある。摂食障害で食べなくなるケースがよくあるが、その逆に過食で肥満になる子供も多いからだ。

 肥満と同時に「やせの子」も増えていることが小児肥満分布調査で分かった。「両極端の子が多くなり、『普通の子』が減ってきていることが問題」と堀川医長。特に思春期になると男女ともやせが増え、その傾向が若年成人まで続いていく。

 母親がやせていて妊娠中の体重増加が少ないと赤ちゃんの出生体重も低くなる可能性がある。低出生体重児は、成人してから心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患が多くなり、糖尿病などのリスクも、大きく生まれた子供より6倍高いというデータも。「胎児期に低栄養だと胎児の組織が低栄養に適応して変化し、生後、今度は栄養過多で育てられていくうちに、大人になってメタボや心血管障害につながっていくと考えられている」と堀川医長。専門医の間では、今や、「小さく産んで大きく育てる」は間違いだともいわれている。

 子供のメタボを防ぐには、肥満予防が一番だが、胎児のときから、きちんと環境を整えてあげること。小学生、中学生ならやはり家庭の場で食生活などの指導をし、肥満度が大きければ治療も含め早期に介入することも大切だ。

 堀川医長は「食事や生活指導、それに通院の継続で、内臓脂肪の多い子供もみるみる減っていく。無理にやせずとも体重を維持して身長が大きくなれば、自然に肥満度は減ってくる」と話している。



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