ストップ・ザ・こどものメタボ(2/2)
2009.11.04

■「食習慣の悪化」に心痛める
ー浜松市立砂丘小学校校長・大石隆示氏

 浜松市立砂丘小学校の大石隆示校長は「学校における小児肥満」と題して全校児童の2割を占めるブラジル人の子供たちと日本人の子供たちとの比較を中心に、食習慣の大切さを語った。

 昭和から平成にかけて浜松近辺の工場に勤務するため大勢のブラジル人がやってきた。そのブラジル人の子供たちが、1年生は特に40人中14人と、35%を占める。その子供たちの食生活というと、肉類はほぼ毎日、魚はあまり食べない。日本の食卓ではおかずをめいめい分けて食べるが、ブラジルではそういう習慣がなく、大きな鍋を中心に各自好きなだけとって食べる。

 夜勤で働いている親たちも多く、おなかがすくと、ポテトフライを揚げて食べる子供もいるという。夕食時刻も遅く、夜食を食べることも多い。先ごろ、希望を募って外国人7人、日本人66人計73人のメタボ健診をしたところ、外国人4人(57%)、日本人7人(11%)がメタボ危険者と分かった。日本人は全国平均とあまり変わらなかったが、ブラジル人の子供たちの肥満が目立つ。栄養相談を兼ねた別の健診では、外国人の親たちの8割が肥満ということだった。

 「実態が分かれば対策も立てられるし、なぜ多いか考えることもできた。検査をきっかけにブラジル人の中には、遅い食事や寝る時刻を早く変えた子供もいるのです」と大石校長。同校でも朝食欠食の児童が全国平均より多かったが、家庭と協力して平均値に戻した経緯がある。「浜松に限らず、日本人の子供も生活習慣の悪化が続けば、今にメタボの子が5割を超えてしまうのではないか」と危惧する。

 そこで大石校長は、運動場の遊具や鉄棒などを活用しサーキットトレーニングコースを設ける計画。給食も和食のメニューを多くしていければと考えている。

■親が見本となり肥満防ごう
ー浜松医科大学付属病院栄養管理部門長・仲山順子氏

 浜松医科大学付属病院栄養部の仲山順子栄養管理部門長は「子供の健康生活と食育」と題する講演で日本人の食生活の変わりようを説明しながら、食習慣の見直しを訴えた。戦後、貧しい時期には栄養失調の子供もいて、太っている子供は、健康優良児で表彰されたものだ。食生活運動でパンやマーガリンという新しい外国のメニューが新鮮でもあり、日本人の食生活も変わってきたが、最近は「ふわふわ、とろとろ」といったものがおいしい食感になったり、たこ焼きにマヨネーズをかけたりと、栄養過剰な時代になった。

 「米の消費もグーンと減り、肉や動物性脂肪の摂取量が格段に増え、今は何が日本の主食なのか分からない時代。子供のときからの肥満防止策も必要だが、大切なのは、親の食生活。子供の見本となるわけだから、健康を維持するには、バランスのいい和食の生活に戻るなど家族が協力して食習慣を改善し、高脂肪食を取らない勇気を持つ必要がある」と仲山氏。

■運動が好きな子供に育てて
ー三重大学教育学部保健体育講座教授・冨樫健二氏

 三重大学教育学部保健体育講座の冨樫健二教授は「小児肥満対策、1に運動・外遊び!」として、子供のころから運動習慣を身に付ける重要性を強調した。

 肥満度が高いほど体力値が低く、小児メタボの発症頻度は、小学校6年生で高度肥満となるのが3人に1人と報告。標準体重20%以上の肥満傾向児(12歳)の割合を都道府県別にみてみると、東北、北海道など北の方が高い。

 一方、脂肪エネルギー摂取率でみると、むしろ北の地域は摂取率が低い。ところがさらに歩数で比較すると、北海道、東北など冬閉ざされる北の方が身体活動量が減っていた。

 ということは?。「子供の肥満は、身体活動量に大きく左右されるのではないか。身体活動量が低下すれば消費エネルギーが減少し、結果として肥満に進展していく」と冨樫教授。肥満やメタボを予防、改善するうえで、大事なことは、体を動かすのが好きな子供に育てること。しかし、ゆゆしいのは、1週間当たり総運動時間の分布は、中2男子で約10%、女子では約30%が60分未満だった。「やせ願望が強く、運動しない女の子が増えていったらどうなるか。男子も同様だが、今後、親になっていくことを考えるとやはり運動を勧めていくことが大事なのではないか」と冨樫教授。幼稚園での運動状況のデータでは、保護者の運動に関する働きかけが子供の運動量を左右していた。

 米国のスポーツ体育協会のガイドラインでは、ほぼ毎日最低でも60分の外遊びや運動をし、その中には息が弾むような運動を15分、と規定されている。「運動の好き嫌いは体力値とも関係してくる。将来のメタボ・リスクを減らすためにも、子供の時から外で遊び、体を動かすのが楽しいと思える環境を整えることが大切」(冨樫教授)




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