第2回撲滅委員会(1/2)
2009.12.16

重要性増す予防医学 メタボ対策に照準

 今年度の第2回メタボリックシンドローム撲滅委員会が11月20日、東京・品川で開かれた。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の病態をめぐる医学界の状況や対策、危険因子である血圧の測定法などについて話し合った。参加者は委員長の松澤佑次・住友病院院長▽北徹・神戸市立医療センター中央市民病院院長▽島本和明・札幌医科大学教授▽齋藤康・千葉大学学長▽中尾一和・京都大学大学院教授▽木村博承・厚生労働省健康局生活習慣病対策室長。

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■生活習慣病から原因分析
ー住友病院院長 松澤佑次氏

≪中国故事から学ぶ≫

 メタボリックシンドローム撲滅委員会の運動の位置づけに関係して、扁鵲(へんじゃく)の三兄弟という中国故事の話をしたい。春秋時代に扁鵲というすごい名医がいて、手術したり、最新の薬を工夫して使ったりしてどんな重病も治す。中国全土に鳴り響くほどの名医とされた。

 そこで王様の文王が評判を聞き、「お金をたくさんもうけているおまえは名医であろう。国の高い地位につけてあげよう」と声をかけた。ところが、扁鵲は兄の方が偉いという。次兄は病状がそれほど重くない間に治してしまうので、その地域では名医とされ、お金も大いに稼いだらしい。

 さらに、もっと偉いのは長兄だといい、本当の病気にまでならないように村人らに説いて回る。

 このため、その地域では病気があまり発症しなかったものの、逆にそうなれば、扁鵲以外誰にも偉いと思われないので、貧乏のまま寂しく死んでいったという。

 その三兄弟の話は時々、住友病院の研修医の選抜の試験に出して、感想を述べさせています。受験者の中には「名医になるより、長兄のような公衆衛生的な医療をやりたい」と、こっちの思いに過剰に反応して、ちょっと見え透いたことを書く人もいる。比較的しっかりした人の中には、「やっぱり名医になりたい、先端医療をやりたい」という人もいるわけです。

 医師としてはそれぞれが大切でどれが一番偉いというわけでもなく、予防医学は大切だけどその価値は、なかなか一般にはわかりにくいという故事なのです。

≪沖縄26ショックの教訓≫

 ただ最近、予防医学が非常に重要なことが、「沖縄26ショック」によりはっきり出たわけです。沖縄という長寿を誇っていた県でも生活習慣を受動的に世の流れに任せておくと、男女とも肥満率が日本でトップになり、突然、男性の平均寿命だけが26位になった。

 この例は、予防医学が極めて重要だということを示すと同時に、太ることが、男と女でかなり結果が違うこともあらわしています。

 まさしく撲滅委員会は、扁鵲の長兄のようなことを、マスメディアとわれわれ医学界と厚生労働省の産官学でやっている運動でしょう。効果は、直ちにわかりにくい部分がありますが、みなさん方のご支援を受け、ますます努力して続けていければ近い将来、良い結果が出ると期待しています。

 このメタボについては、まだまだ誤解が多い。糖尿病には原因がいっぱいあるわけで、やせた糖尿病から、太った糖尿病、あるいはウイルスで侵されて激症で発症する糖尿病もある。原因は多岐にわたっています。

 高血圧についてもいろいろな原因があると思われますが、まだまだ原因がわかっていないものが大半です。脂質異常も同様です。このような非常に複雑な病因で起こっている複数の病気をくくってしまったメタボはさらに掛け算をするくらいややこしい、わかりにくい病気の考え方だという誤解が最たるものです。

≪疾患概念を提唱≫

 私どもは、それぞれの病気の複雑な原因の中で、非常にシンプルに肥満、内臓脂肪が関係した部分を切り出してまとめた疾患概念を提唱したのです。糖尿病の側からみても、メタボ型や内臓脂肪型は必ず存在する。これが今の飽食と運動不足により増えていっている。

 高血圧にしても、多くは原因不明ですが、その中で内臓脂肪が原因したものは、はっきりある。

 それらを切り出していって、まとめた病態をメタボと定義しているのだと理解していただくと、対策が内臓脂肪を減らす生活習慣の改善ということになり、原因が改善すれば一網打尽に複数の病気が軽快するというきわめてわかりやすい疾患概念になるのです。

 一方では、メタボ以外の糖尿病や高血圧、すなわち内臓脂肪とは無関係の生活習慣病の原因追究がもっと焦点が絞りやすくなる。その意味での位置づけからすると、このメタボという概念で、今の生活習慣病を理解することは、予防医学として非常に的を射たものではないかと、撲滅委員会としては考えています。

■欧米との差 浮き彫りに
神戸市立医療センター中央市民病院院長 北徹氏

 日本動脈硬化学会は、動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳卒中など)の成り立ちについて、脂質代謝、なかでもLDL(悪玉)コレステロール代謝を中心に臨床並びに基礎研究を柱に学会活動をしてきました。その過程で、LDL値の上昇と動脈硬化の進展が相関することが、さらにLDLの酸化が重要であることなどが明らかになってまいりました。

 家族性高コレステロール血症(FH)は、LDL値が異常に高く、動脈硬化が早期に発症しますが、ノーベル賞受賞者のゴールドシュタイン博士とブラウン博士により発見されたLDL受容体が、FHでは、欠損しています。

 遠藤章博士(東京農工大特別栄誉教授)により発見されたスタチンは肝臓のLDL受容体を増加させ、血中LDL値を低下させ、結果として動脈硬化性疾患の発症が抑えられることも明らかになってきました。

 学会として、血中LDL値のコントロールが30%の動脈硬化性疾患発症抑制に重要であることを提唱してきたわけです。血中LDL値のコントロールだけでは、抑えきれない動脈硬化性疾患の危険因子として、メタボリックシンドロームが提唱されてきました。メタボリックシンドロームの予防も動脈硬化性疾患発症抑制には、重要でありますが、血中LDL値のコントロールの重要性が忘れられる傾向にありますので、動脈硬化学会としては、この点を強調して申し上げさせていただきます。

 もう一つ重要な点は、日本動脈硬化学会の国際委員会でアジア・パシフィック地域のメタボの問題を取り上げます。欧米のそれと、違いがあるのか、検証し、それぞれの特徴を浮き彫りにしようとしています。

■家庭血圧の大切さ理解
ー札幌医科大学教授 島本和明氏

 「高血圧ガイドライン2009」を今年1月に発表しましたが、そのなかで血圧の厳格な管理が強調されています。そして、血圧の厳格な管理に家庭高血圧の評価も重要であることも述べられています。メタボリックシンドロームにおける血圧の管理を厳格にしていく中で、自宅で測定する家庭血圧が非常に重要だということを紹介させていただきます。

 まず、特定健診・保健指導でメタボの血圧の基準は、130〜85mmHg以上です。それから、血圧の測定法は、病院外来で行う場合には、血圧は2回測って、その差が5mmHg以内になったときに平均を取る。たとえば、1回目が160mmHg、2回目が150mmまで下がったら、10mmHgの差があるので、再度、測定します。それで次に差が5mmHg以内になったら、その平均を取ります。

 ただ、特定健診のときに、その方法を使うのは大変です。厚生労働省の国民健康・栄養調査、循環器疾患基礎調査でも、数年前までは1回しか測っていませんでしたが、やはり1回目は上がりやすいので、2回測って平均をとることにしています。

 血圧の評価には診察時血圧と家庭血圧の2つあります。診察時の血圧は140〜90mm以上で高血圧です。家の血圧は、135〜85mmHg以上で高血圧です。だから、2つの評価で見ると、4つに分けられる。両者が一致して血圧が正常であれば、正常血圧で、高ければ高血圧です。家庭の方が高い場合が「仮面高血圧」で治療が必要、病院で高いのは「白衣高血圧」で治療の必要はない。

 このように、高血圧ガイドライン2009では血圧測定にあたっては、家の血圧を大事にすることが原則で、特定健診・保健指導に十分に役立てていただきたいということになっています。

 家庭血圧では5〜7日間の朝と夜、それぞれの血圧の平均を用いることになっています。朝でも夜でも高い方の血圧が135mmを超えていたら高血圧とするというように決めています。

 降圧目標の評価にも家庭血圧を入れていますが、降圧目標は、家で測ると低めになっているということを、患者さんによく理解していただきたい。

 それから、判定については、日本のガイドラインでは、家庭で135〜85mmHg以上で高血圧とする。その一方で、125〜85mmHg未満が正常血圧としています。

 このため、特定健診・保健指導に対する高血圧学会からの提言としては、なるべく家庭血圧を入れて、白衣高血圧とか仮面高血圧を除外していただきたいという考え方を明らかにしています。

 特定健診のとき、診察時血圧と同じ判断をしますから、130〜85mm以上あると、メタボの基準として、血圧は高めであると考えています。

 ただし、家庭血圧を測っている人には家庭血圧を確認し、125〜85mmHg未満なら、血圧が全く正常と判定します。この場合は、むしろ白衣高血圧と考えて、この健診時の数値はとらないでほしい。逆に、健診時の数値は、血圧の正常高値にもならず、正常である。しかし、家庭血圧が125〜85mm以上であれば高め、135〜85mmHg以上だったら高血圧と考えて、受診勧奨の対象にもなるということです。

 ただ、家庭血圧の課題は、まだまだエビデンスが少ないこともあり、今後しっかり整理していくことになっています。



第一生命
オムロンヘルスケア

    メタボリックシンドローム撲滅委員会とは メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーンの活動 メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛各社の取組み
小児肥満
委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   島本 和明(日本高血圧学会理事長/札幌医科大学学長・理事長)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/神戸市立医療センター中央市民病院院長)
   齋藤  康(日本肥満学会理事/日本動脈硬化学会理事/千葉大学学長)
   渡邊  昌生命科学振興会理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会前理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
   齋藤  勉(産経新聞社常務取締役 編集・論説・正論・写真報道担当)
   平田 篤州(産経新聞社総合企画室長)
   宮本 幸一(ニッポン放送専務取締役)
   中村 芳章(フジテレビジョン事業局長)
オブザーバー
   上田 博三(厚生労働省健康局長)
   木村 博承(厚生労働省健康局 生活習慣病対策室長)
   春日 雅人(国立国際医療研究センター研究所長)
   小林三世治(第一生命保険 支配人・健康増進室長)
リーダー・総合監修
   宮崎 滋(東京逓信病院副院長・内科部長)
医学分野
   片山 茂裕(埼玉医科大学病院院長・埼玉医科大学内科学 内分泌・糖尿病内科教授)
   横出 正之(京都大学医学部付属病院 探索医療臨床部 教授)
   和田 高士(東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授・同附属病院新橋健診センター所長)
   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
医療・保健指導分野
   津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)
   野口 緑(尼崎市環境市民局市民サービス室 健康支援推進担当課長)
運動指導分野
   宮地 元彦(国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム運動ガイドライン プロジェクトリーダー)
   斉藤 満((社)日本ウオーキング協会事業部長)
   菅野 隆(日本健康運動研究所代表・健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
   鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授)
   柴崎千絵里(東京女子医科大学病院栄養管理部)
   小野 真実(女子栄養大学栄養学部専任講師(食生態学研究室))
メタボリックシンドローム撲滅委員会
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厚生労働省
学会
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協力団体
高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
メディア
サンケイリビング新聞社扶桑社
協賛各社
第一生命保険相互会社 アステラス製薬株式会社 オムロン・ヘルスケア株式会社 グラクソ・スミスクライン株式会社
第一三共株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 日本酪農乳業協会
賛助企業
株式会社カーブスジャパン