■鍵は「脂肪エネルギー比率」
ー生命科学振興会・渡邊昌理事長
健康・栄養調査に詳しい生命科学振興会の渡邊昌理事長(前国立健康・栄養研究所理事長)に、今回の国民健康・栄養調査について解説してもらった。
戦後、餓死者の恐れもあったので、GHQに食料を申請するために、終戦直後の昭和20年12月に当時の栄養研究所の創始者であった佐伯矩(ただす)氏の門下生らによって東京で行われたのが、現在に続く国民健康・栄養調査の始まりです。食生活の変化、脂肪やタンパク質摂取の増減などこのデータに基づいています。最初は単なる栄養調査でしたが、平成15年の「健康増進法」の施行に伴い、生活習慣全般も調査することになり、身体状況や運動などの項目が加わり、それで生活習慣病等の実態がだんだんわかるようになってきたのです。健康に絡む一番大きな調査であり、予防医学の成果を示す一番の基本データでもあるのです。
今回の国民健康・栄養調査のキーポイントは、肥満者の動きではないだろうか。「健康日本21」では、肥満者を平成24年までに半減する目標を立てたけれども、19年の中間発表では逆に増えてしまった。しかし、20〜60歳代の男性においては肥満者の割合は増加傾向にあるものの、その伸び率は鈍化してきている。また、40〜60歳代の女性でも肥満者の割合が減少してきており、少しずつではあるが対策が功を奏してきているのではなかろうか。
女性の「やせ」は、少子化につながってくるのかもしれない。やせているのになおかつ減らそうと思っている人がいるのが問題です。BMIが18切ったら、月経が止まるなどの健康障害が出てくる。
運動に励む男性が多くなってはいるが、半面、女性は、こまめに身体を動かしていることが読み取れる。およそ3割が運動習慣を身につけているが、特に地方では、車で移動することが多くなり、運動習慣はかえって減ってきているのではないか。それが歩数にも反映していると考えられる。
栄養に関して注目されるのは「脂肪エネルギー比率」。その比率は、脂肪から取ったエネルギーが1日に取るエネルギーの何%に当たるかということ。日本人の食事摂取基準(2005年版)での脂肪エネルギー比率は、18〜29歳では、30%未満が目標となっているが、今回、30%以上の人の割合は、成人男性(17.4%)に比べ、特に女性(25.0%)でその比率が多い。脂肪エネルギーの摂取が直接コレステロールに反映するわけではなく、女性は閉経後コレステロールが跳ね上がるので、対象集団がどういう人たちだったのかが大事なことになる。
座位などでの静かな活動である「静的動作」や、階段の上り下り、掃除機をかけるなどの「日常動作」は、予想以上にエネルギー消費があることがわかってきた。今まであまりカウントしていなかったこともあり、これからは消費エネルギーの重要な要素として考慮に入れる必要があります。私たちは、グラフのように、「1日に使うエネルギー消費の内訳」を5分類に分けて考えます。わざわざ改まって運動に励まなくても、日常こまめな動作で身体を動かすことが大切です。
このごろ、喫茶店などでもたばこを吸っているのは、女性が多かったりする。たばこのリスクをきちんとわかっているのかどうか。妊娠中のたばこは、卵子のDNAを傷つける率も高いともいわれているのです。若い男性の喫煙が減ってきているのが目立ちますが、昔は成人男性の60%が喫煙し、今は30%台に下がってきたということでしょう。
「朝食欠食」は、40代でも増えてきたところが問題。女性も30代が急激に増えてきており、これはストレスや夜更かしが朝食を抜く一番の原因となっているのでしょう。睡眠も大いに関係することで、これからは、ストレスと朝食、睡眠などとのクロスした比較調査が必要です。
今、わが国では健康にかかわる大きな問題をいくつも抱えていますが、予防医学の重要性がもっと唱えられてしかるべきでしょう。


























委員長









